成果を見える化しよう
やる気を向上し、達成感を得るために成果が見えることが必要です。
特にもう少しで達成というときには通常以上に頑張れるものです。
これを目標勾配仮説といいます。
しかも、人は自分で作り上げたものに対して、高い評価をすることが知られています。
自分が関わって完成させたものは、欠点よりも良いところが目につき達成感につながります。
一方で、やる気が大きく減ってしまう要因に徒労があります。
成果が無駄になってしまうことは精神的に大きなダメージになります。
徒労に関しても、行動経済学者ダン・アリエリー氏はこんな実験をしています。
決まった形にレゴを組み立ててもらって、出来上がった時に報酬が出されます。
(報酬は1つめは2ドル、2つめは1ドル89セントという具合に、
11セントずつ減っていくので参加者はどこかでやめます。)
1つめのグループ(条件なし)では出来上がった作品は箱にしまわれ、
もう1つのグループ(シーシュポス条件※後述)では、作品は目の前で壊されブロックに戻されました。
目の前で作品を壊す行為は、成果にどれほどの影響を与えるでしょうか。
条件なしでは平均10.6個に対し、シーシュポス条件では7.2個と大きな差が出ました。
実に3割以上です。
多くの経営者は、やりがいが成果につながることは認識していますが、
3割以上も差が出ると予測している人は少数です。
もしプロジェクトが中止になる場合でも、次につながる意味のある成果として終わらせましょう。
報酬が十分な会社でも、成果を感じられない場合は想像以上に苦痛に感じるものです。
※作品を目の前で壊される方をギリシア神話になぞらえシーシュポス条件と言います。
神々を欺いたシーシュポスは、罰として大岩を山頂へと運ぶことを命じられますが、
あと少しというところで大岩は転がり落ちてしまいます。無限の徒労が罰というわけです。
世界を作る内発的動機
前編では内発的動機について、アンダーマイニング効果とエンハンシング効果をご紹介しました。
自分がやりたいと感じること、内発的動機。
ここではもっと極端な例を見てみましょう。それは報酬が無料の場合についてです。
無償で作られる百科事典_ウィキペディア。無償で改善されていくOS_Linux。
多くの無償ソフトウェアや、医師、弁護士など専門家の活動。例を挙げるときりがありません。
かつては無償のものは、有償のものよりも価値が低いと考えられてきましたが、
現在、私たちの身の回りにある無償は驚くほどハイクオリティです。
重要な点は、無償だからやる気がでるのではなく、
やりたいことをするのにアメもムチも不要だということです。
賞賛や名声、何より誰かのためになるという社会的欲求の満足こそが報酬となります。
内発的動機を育むポイントは、自主性、成長、目的と言われています。
自主性は、自分の人生の方向は自分で決めたいという欲求。
成長は、何か大切なことについて上達したいということ。
そして目的は、私たち自身よりも大きな何かのためにやりたいという切望です。
自主性をうまく取り入れている例が、googleの『20%ルール』です。
20%ルールでは仕事の時間のうち、20%を好きなことに使うことになっています。
大きな裁量が与えられ、各人が自主的に働きます。
20%ルールによってGmailやGoogle Newsなど、約50%の製品が生まれています。
余談ですが、従来の仕事に加える形で導入してしまうと
120%ルールと呼ばれる過剰労働になり、あまり成果は得られませんのでご注意を。
まとめ
生きていく分以上の『報酬』、これまでは単に高い安いという視点が多かったのですが、
『心を満たす』ことの重要性が再度見直されつつあります。
成果主義という言葉は一見それらしく感じますが、ニンジンをつるされた馬、
あるいはムチを打たれる馬、どちらのように扱われてもあまり良い気分はしませんね。
最低限のお金が配られるベーシックインカムや、AIに仕事を奪われるなどが話題になる中で、
やりがいや生きがいをどう感じるかが21世紀のビジネスの焦点になっていくでしょう。
願わくば多くの人々のやりがい、生きがいが認められる社会であってほしいものです。