やる気と報酬の意外な関係【前編:間違った報酬】『忙しい人のための行動経済学』

SPONSORED LINK

格差社会と報酬

1990年代のバブル崩壊以降、日本は失われた30年と言われる不景気に突入しました。
その間、労働形態は多様化し非正規雇用者が多くを占めることが当たり前になってしまいました。

ボーナス無しやサービス残業といった『報酬』に関わる問題がクローズアップされる一方で
今や1%の富裕層が世界の50%の富を持っていると言われています。

生きていく分以上の『報酬』にはどのような意味があるのでしょうか。
私たちの想像より不合理な、やる気と報酬の関係を見てみましょう。

ブラック企業なのにやる気がでる場合

少ない報酬と過酷な労働条件。
そもそも世の中にブラック企業と呼ばれる会社が存在できるのはなぜでしょうか。

適切な競争社会であれば、人々はより良い会社に転職してしまい、
ブラック企業で働く人はいなくなるはずです。

要因は沢山ありますが、その一つは『認知的不協和の解消』というバイアスが働くためです。
これは割に合わない環境への理由付けとして、自分にやる気があったからと誤認するものです。

私はこんなにひどい労働環境で働いている。という現状を、
⇒私は”自分がやりたいから”ひどい労働環境でも働いている。という認識の修正が働くのです。

一見やる気が出たように見えますが、危険な状態です。

何より心身を壊し、場合によっては過労死の危険があります。
これは従業員にとってだけでなく、企業にとっても最悪の形でイメージダウンが起こります。

また、動機が自分がやりたいからだけになると、企業は従業員をコントロールできません。
トラブルの元になり、他の要因でやる気が阻害されれば辞めてしまいます。

ブラック企業という形態は従業員にも企業自体にも、そして社会にも良いところはありません。

報酬がやる気を阻害する!?

基本的に報酬はやる気をアップさせます。
しかし、時として報酬がやる気を奪ってしまうこともあります。

やりたいからやっていたこと(内発的動機づけ)に対して
金銭を支払う(外発的動機づけ)を行うことで、内発的動機づけが弱まってしまうことです。

このバイアスは『アンダーマイニング効果』と呼ばれています。
趣味を仕事にしたらやる気が無くなってしまった場合などが典型です。

アンダーマイニング効果は子育ての分野でも注目されています。

子供たちが頑張ったことに、ついご褒美をあげたくなりますが、
『やりたいこと』が『ご褒美を貰うこと』に置き換わってしまいます。

一方、報酬はやる気を出すことにもつながります。
賞を取るために頑張っている子を思い浮かべてください。
『エンハンシング効果』によるもので、誰かに認められたり褒められるとやる気に繋がります。

アンダーマイニング効果とエンハンシング効果は一見矛盾しているように見えますが、
報酬が、金銭的なモノによるか、褒め言葉などの精神的なものかが違います。

仕事は金銭の授受があって当然。だからこそ金銭以外の報酬も大切です。
エンハンシング効果をうまく活用していきましょう。

高額な報酬がもたらすもの

アメリカ証券規制当局は1992年、各企業に幹部の報酬を開示するよう義務付けました。
当時の最高責任者たちの平均収入が、一般的な従業員の約130倍にも達していたことを問題視したのです。

しかし、開示された給料が他の最高責任者たちと比べられると真逆のことが起こりました。
彼らは報酬の額で競い合い、今や一般的な従業員の360倍を超えています

どうしても人は価値を『相対的』にしか見られないのです。
いくら高額であっても、他の誰かより給料が少ないのは気に入らないわけです。

高収入について、彼らのやる気につながっているなら良いという意見もあります。
もし高収入がやる気につながるのなら、どのようなことが起こるでしょうか。

人気の行動経済学者、ダン・アリエリー教授が行った実験では、
被験者に6種のゲームをしてもらい、成功したときに報酬を渡しました。
この時の報酬を、1日分の給料相当・1か月分の給料相当・5か月分の給料相当で比較しました。
(余談ですが、この高額報酬の実験は物価の安いインドで行われたとのこと。)

さて、高額な報酬は成功に結び付いたでしょうか。
答えは残念ながらNOです。

1日分と1か月分での成功率は40%程度とあまり変わりませんでした。
しかし5か月分となると成功率は30%程度まで大きく下がってしまいました。

過剰なやる気は緊張をもたらし、逆効果となってしまうのです。
追加実験されましたが、高額報酬で成果が向上したものは、ジャンプし続けるなどの単純作業のみでした。

高額報酬を貰っている人たちは単純作業をしているとは思えないので矛盾していますね。
少しでも認知能力を使う作業は高額報酬と相性が悪いようです。

なお、やる気の原動力が罰則の場合でも同様です。
弱い罰則は成果につながりますが、過剰な罰則は緊張とあきらめを生んでしまいます。
うまくいかないからと罰則を強化することも逆効果になることが多いのです。

後半につづく

前半は『間違った報酬』をテーマにしてみましたが、いかがだったでしょうか。

行動経済学の目的に『人はなぜ不合理な行動をするのか』の研究があります。
報酬という視点で見てみると不合理なことばかりですね。

特に認知的不協和の解消に心当たりがあるひとは、心身のチェックをしてみてください。
仕事よりも大切なのはあなたです。

後半は『やる気』を中心にご紹介する予定です。お楽しみに!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です