強力過ぎる暗示の力(プラセボ効果とプライミング効果) 『忙しい人のための行動経済学』

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意外と左右されている感覚と選択

今回は、プラセボ効果とプライミング効果をご紹介します。

私たちは普段自分の意思で判断し行動しているように思いますが、実は周囲から多くの影響を受けています。
特にメディアや広告を通じての暗示と、自分の選択を見直すには面白い材料になるかと思います。

暗示=悪用のイメージがあるかもしれませんが、悪いのは悪用する人であって道具ではありません。
暗示に影響されること自体は人に備わった必要な能力なのでそうした観点でご覧下さい。

プラセボ効果とは

プラセボ効果とは、薬効がない薬(偽薬)を投与しても、病状が緩和されたり治癒したりする事。
詳しいメカニズムは分かっていません。

行動経済学の分野では、味覚まで変えてしまうものとして注目されています。


コカ・コーラチャレンジ

「コカ・コーラと他社のコーラを飲み比べてください」と言って味見して貰うと
コカ・コーラを選ぶ人が多数でした。

これにはペプシコーラも黙っていられません。
銘柄を隠して比べて貰う実験を行い、今度はペプシコーラを選ぶ人が多かったのです。

どちらかの実験が間違っていたのでしょうか?
いいえ、脳波まで測定されましたが、人々は『コカ・コーラ』という情報によって美味しいと感じていたのです。

ペプシよりもコカ・コーラの方がより強く背外側前頭前野と呼ばれる
脳の作動記憶、連想、高次認知などを司る部分が活性化されていました。

誰もが知っている赤いラベルに白いロゴ。注がれて泡立つ炭酸のイメージ。
コカ・コーラ社が多額の広告費をかけて作ってきたブランドイメージが味覚まで変えていたのです。

少し余談ですが目隠し試験で勝利したペプシコーラは、より多くの糖質を含んでいました。
甘さは脳の快楽を司る部分と深く関わっています。

甘さを快楽と感じる性質より、情報・イメージが勝ったことは脳研究の分野でも注目されました。

プラセボ効果の応用

大々的な広告でなくても、十分にプラセボ効果の恩恵は受けられます。

  • 秘伝のたれ
  • 一日限定〇食の
  • 行列のできる
  • ○○年の伝統

こうした言葉も料理の味に一役買っているのは面白いですね。
脳が美味しいと感じれば美味しいのです。

反対に文句を言いながらや他事に気を取られながらだと、不味くなるのはご存じの通り。
難しい話も食事の時くらいは忘れておきましょう。

プライミング効果とは

あらかじめ先行刺激(プライム)が与えられていると、関連する情報が無意識に使いやすい状態になります。
使いやすくなった情報は、思い出しやすくなったり、選択や行動に影響を与えたりします。


プライミングの具体例

簡単に投票率を上げる方法として、選挙当日「今日選挙に行きますか?」と聞く方法があります。
これで25%も多くの人が投票に行きます。

これはアメリカでの調査なので、日本でも同等に効果があるかはわかりません。
重要なのは、『選挙』というプライムで投票率が上がるということです。

「今日選挙に行きますか?」と質問されたことを忘れたとしても、
無意識に選挙という情報が使いやすい状態になっていて、選挙に行く人が増えるのです。

選挙だけでなく、買い物でもプライミング効果は働きます。

例えば、上の記事でコーラを取り上げましたが、読んでくれた人は自販機ではコーラを見つけやすくなり、
プライミングされていない飲み物よりもコーラを選びやすくなります。

ポイントは、プライミングされたことが意識に上がったとしても、
人は『自分の意思で思いついた』と考えることです。
自分は選挙に行きたかったから選挙を思い出し、コーラを飲みたいから選んだというわけです。

プライミング効果について恐ろしいものと思われるかもしれませんが、少し待ってください。

私たちは自分を取り巻く膨大な情報の中で、選択・判断していかなければなりません。
そうした時、瞬時に判断を下せるというのはとても便利なことなのです。

厳密な価値判断を、すべての情報に照らし合わせて行うことは現実的ではありません。
最近見聞きした事に選択が左右されることはある意味妥当なことなのです。

プライミング効果には、選択しにくくなる負のプライミングもあります。
嫌なイメージを持っているものは意識に上りづらくなるのです。

プライミングで選挙に行かないと決めている人や、コーラが嫌いな人を動かすことは期待できません。

間接プライミングと行動への影響

選挙に対して『選挙』という言葉そのものをプライムにすることを直接プライミングと言います。
一方、連想される言葉でもプライミング効果があり、これを間接プライミングと言います。

「パン」という単語を読んだり覚えたりした後は、
「バター」や「ジャム」なども思い出しやすい状態になっています。

「パン」という言葉を聞いて1秒程度の間に、連想される概念が活性化されます。
この時「バター」からは「牛乳」などの更に連想されるものも活性化されています。

意識できないほどの多くの概念が、無意識のうちに(しかも高速で)準備されることは驚愕に値します。
更に驚くべきことにプライミングは行動にも影響を与えるのです。

ニューヨーク大学で、18歳から22歳の学生に、単語から文章を作成する問題を出しました。
この時、単語の半分程度に高齢を連想させる言葉を混ぜておきました。

問題を解いた後の様子を観察すると、学生たちの歩行速度は遅くなっていたのです。

『高齢が連想される』プライムを学生たちは全く意識しておらず、
本人たちも関係はないと主張しましたが、結果は明らかでした。

概念が行動に影響を与えるプライミング効果を、イデオモーター効果と言います。

言葉と行動の関係は、順序を逆にしても成り立ちます。
早く歩くことを5分続けたあとは、「若さ」に関係する概念が活性化されます。

どうせなら自分のプラスになるようなプライミングを活用したいですね。

まとめ

今回は、暗示特集ということで2本立てにしましたがいかがだったでしょうか。

筆者は日頃コーラを飲まないのですが、この記事を書いていて久しぶりに飲みたくなりました。
ものの見事に自己暗示されています。

プライミングの記事では、自分の発想が想像以上に自由ではないことに戸惑いを覚えたかもしれません。

大切なのは暗示されないことではなく、暗示をうまく利用することです。

例えば良い環境を作ると、自然と良いプライミング効果が増えます。
良い環境では良いイメージが活性化されて、良いアイデアを生みます。

googleやAppleといった優良企業が、従業員にポジティブに働いてもらうため、
惜しみなく優遇していることを見ると、環境がいかに大切か分かります。
(日本の企業であまり思いつかないのが悲しいところですが)

環境を急に変えることは難しいかもしれませんが、良いイメージのものを周囲に置いたり、
言葉や行動が良い暗示になるように狙ってみると面白いでしょう。

あなたの言葉や行動も周りの人へのプライミング効果になるのですから。

人の判断を変えてしまう要素はまだまだあります。次回をお楽しみに

5 件のコメント

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