保有効果 手に入れるだけで幸せ 『忙しい人のための行動経済学』

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保有効果とは

保有効果とは、保有しているものの価値を高く見積もること

保有効果の特徴は、三つの奇癖(きへき)として知られています。

  1. 保有物に惚れ込むこと
  2. 失うことを恐れること
  3. 交渉相手も自分と同じ価値観だと思い込むこと

最近は、フリーマーケットやネット売買などで、自分の持ち物を売ることが人気です。
自分の物はいくらかを考える機会も増えたのではないでしょうか。

保有効果の発見

保有効果を発見したのは、リチャード・セイラー氏(2017年ノーベル賞受賞)がまだ大学院生だった1970年代のこと。

彼は、古典経済学を教えていたR教授の行動に矛盾を発見したのです。

R教授はワイン好きであり、オークションに出かけてワインを入手していたのですが、
この時払うのはワイン1本に35ドルまでと決めていました。

R教授は手に入れたワインを売りたがらず、100ドルならしぶしぶ売ると言うのです。

R教授の教える古典経済学によれば、ワインには1つの価値が与えられるべきです。
しかし保有する前と後で、持ち主が考える価値は大きく変わっていました。

保有効果の具体例

あなたが300円のジャンボ宝くじを買ったとして、
販売終了後に譲ってほしいと言われたらいくらで売るでしょうか。

人々の回答を平均すると、1180円になりました。実に購入額の約3.9倍です。

ここでも三つの奇癖を見ることができます。

1.保有物に惚れ込むこと
自分が買った宝くじは他より当たりやすいと思う。

2.失うことを恐れること
人に譲って、もし当たったらどうしようと考える。

3.交渉相手も自分と同じ価値観だと思い込むこと
かなり高い額でも、相手も納得して交渉成立すると考える。

宝くじから見込まれるリターンは45%前後、約135円ほどであることを考えると
ずいぶん吹っ掛けているのですが、保有している当人たちにはそのぐらいの価値に見えるのです。

更に回答を男女別でみてみると面白いことが分かります。
男性の平均は1326円、女性は830円でした。
保有効果は男性のほうが強く働くことが知られています。

宝くじのみならず、様々なものに保有効果は働きます。
特に手に入れるのが困難だったものは高く価値を見積もってしまいます。

入手困難なアメフトのチケットで実験された際は購入希望額に対して、
販売可能額が14倍にも達し、取引が成立しませんでした。

それでも経済は回る

ここまでの話を聞いて「誰も物を手放したくないならビジネスが成り立たないのでは?」と思ったのではないでしょうか。

大丈夫です。実は交換目的のものには保有効果は働かないのです。
使用目的のものに保有効果が働くわけです。

例えば、靴屋さんから見れば革靴は(お金との)交換目的のものです。
一方、あなたが革靴を買った場合は、購入額以上に価値を感じるはずです。

お互いに得しているわけですから、良いビジネスというわけです。

保有効果はビジネスの妨げにならないだけでなく、販売促進にも利用されています。

深夜の通販番組などで、好感の持てるモデルが筋トレグッズを使っていると、
視聴者は自分を重ねて、自分が保有しているように錯覚します。

しかも『1か月間お試し可能、返品の際は全額返金』などと言われてしまうと、
試してみるか……と思ってしまいます。
このサービス、保有したものを返品する人はほとんどいないようです。

保有効果と付き合っていくには

保有効果は基本的にあなたを幸せにするものです。
自分の持っているものに満足して幸せな気持ちになれるわけですから。

熟成されていくワインに思いを馳せたり、宝くじが当たった生活を想像したり、
お気に入りの革靴に足を通すことは幸せな気持ちにさせてくれます。

しかし保有効果は私たちに悪さもします

持っているものの価値で人と言い争ったり、物を捨てられず掃除がはかどらなかったり、
三日坊主になる筋トレグッズを買ったりすることは、自己責任ながらも何とかしたいものです。

保有効果は弱くできることも知られています。

保有効果を確認するゲーム形式の実験では、
「(株売買の)トレーダーの気持ちになって」と言うだけで保有効果は弱くなります。
また、実際に何度か物々交換を行った人は、保有効果が弱くなっています。

少し見方を変えるだけでも保有効果はコントロールできるのです。

最後に行動経済学者が推奨する、物々交換の価値判断方法をご紹介します。

『Aを持つことを、Bを持つことに比べてどれほど強く望んでいるか』を考えること。
つまり、両方に保有効果を働かせた上で判断することです。


私たちに身近な『保有効果』いかがだったでしょうか。

保有効果は物だけでなく、職業や恋人、政治や宗教といったイデオロギーにまで影響しています。

基本的にあなたを幸せにするもの、時として悪さをするもの、コントロール可能なもの。
自分にも、そして相手にもある保有効果。うまく付き合っていきましょう。

私たちの価値判断を変えてしまう要素はまだまだあります。次回をお楽しみに!

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